天池志津子シナリオSS・体育祭編

  • 2008/04/11(金) 21:10:42

FORTUNE ARTERIAL
天池志津子シナリオ−体育祭編(イベント:5/11)

体育祭前日、謎の場所(笑)
「ふぉっふぉっふぉ、おぬしもワルよのぉ」
「いえいえ、お代官様には敵いませんよ」
別に時代劇ではない。ついでに言うとこれはかなでと伊織の会話だ
「いおりんは大船に乗った気分でいたまえ」
びしっと胸を張る。とはいえ伊織よりもかなり低いのでイマイチ迫力には欠けるが。
「こういう時はやっぱり悠木姉だな」

そして体育祭も終盤近く。

「次の競技、孝平君の出番よ」
「俺が出る?」
そんな競技あったか?自問自答する。
「えりすぐりの精鋭が必要な男達の熱き競技なんだって」
俺って精鋭だったのか。孝平は今になって自分の能力に気づいた。
「孝平君は会長の演説聞かなかったの?サプライズ競技だっていう話」
そういえば伊織会長が何かものすごい演説をしていたらしいが、不運にもその時はトイレに行っていたので孝平には窺い知れない。
しかし、勝手に競技を追加するところがいかにも会長だなぁと思うし、その追加競技に自分をエントリーさせるところもまた会長だなぁと孝平は思う。
「二人とも頑張ってね」
「行って来る」
司も「精鋭」の一員らしい。

「会長や東儀先輩も走るんですか?」
トラックに行くとやる気マンマンの伊織と渋々な征一郎が走者となっていた。
「俺は言っただろ?『精鋭達の戦い』と」
確かにこの二人は能力的にも人気的にも精鋭にふさわしい。
「支倉君、アピールのチャンスだよ」
伊織は親指を立てて孝平の目に周囲を向けさせる。観客、特に女性陣の注視が凄い。
「でも、勝つのは当然、俺だけどね」
・・・そう言うと思いました。

「よーい、ドン!」
観衆(特に女性陣)注目。人気者達が走るのだから当たり前だ。
今まで裏方に徹していた自分をアピールするチャンス。そう思うと孝平の走りも自然に全力を出し切るべく本気になる。声援が気持ちいい。
「?」
しばらく走ると机が視界に入ってきた。その上には何枚かの封筒が並んでいる。その真ん中にひときわ豪華な封筒。
「もらったぁぁぁ!」
これは当たりだ。そう野生の本能が叫び、瞬時に手を出す。
「甘いな、俺の勝ちだ」
が、その孝平の手の下にもう一本、別の手が入り込んでいた。
「何奴!」
手の主は司だった。いつもの雰囲気とは違い。速い。
「わりいな、楽をさせて貰う」
司の手にした封筒には「ボーナスチャンス」と金文字で書いてある。
「お前の負けだ」
我に返った孝平だったが、時すでに遅し。もう封筒は司が指し示した「大凶」と達筆な文字で書いてある一つしか残ってはいなかった。
「俺は負け組・・・」
落ち込む孝平と喜ぶ司。しかし戦いはまだ終わっていない。ゴールした時が終わりなのだから。

「マドリガル・ルイス・ラ・ヨハンセン・ド・ラグリエールを背負って走れ?」
何だ。このやたらに長くて訳がわからない名前は。
「留学生だな」
留学生というとやっぱり金髪でナイスバディなんだろうな、単純に期待する司。
「ぶーぶー!」
しかし、書いてある場所ではなぜかかなでがふくれて待ち構えていた。
「あのー、何か俺に問題でもあるんすか?」
「へーじ!キミはなぜこの悠木かなでの策を見破ったんだ!」
かなで的には封筒に堂々文字を書くのが策らしい。
「それより、このマドリガル(以下略)って留学生はどこっすか?」
なんかついていけない司はとっとと本題に移る。
「この方だ!」
ドラムロールと共に現れたのは・・・
「な、なんすかこれ!」
「へーじよ、お前の目は節穴か!」
でんと司の前に居座っているのはパンダ。もちろんナマモノではなくて置物だが。
「パンダ」
「うむ、日中友好のためにへーじも一肌脱ぐのだ!」
「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!」
意味を理解した司はパンダを担ぐ。重い。これが日中友好へ向けての課題の重さか。
「北京オリンピック!」

「謀ったな、伊織」
征一郎の前には長い黒髪の女生徒が腕組みをして立っていた。
「・・・ふぅ」
思いっきりやる気がない。
「すまんが、これもルールだ」
「そんなの、つまらないわ」
一番説得しにくそうな相手を俺にあてがうとは、征一郎の中でまた伊織への好感度が低下した。

「何だ、瑛里華かよ」
「何だとは何よ、兄さん」
「だってさ、綺麗な女の子をお姫様抱っこして走れる!と思ったのに、自分の妹なんて面白くも何ともないじゃないか」
お手上げのポーズといかにもつまらなさそうな表情で伊織が愚痴る。
「・・・悪うございましたね、あなたの妹で」
「おかしいなぁ、瑛里華は支倉がお姫様抱っこする予定だったのに・・・」
「兄さん、自業自得って言葉知ってる?」

「うわっ、壮絶・・・」
司や他の漢達の凄い状況を横目で見ていると、「大凶」なんて封筒を持っている自分に何が起こるのやら想像するだに恐ろしい。
「ええい、俺も男だ!」
勇敢にも孝平は封筒を開ける。中にはなぜか風紀シールが貼られている紙が一枚。
「この文章は、こーへー以外の人が読むように」
・・・って、俺はその「こーへー」なんですが・・・
読まないと進めないし、まさか「封筒の中身を変えてくれ」と言うこともできない。ルール違反だ。
「仕方ない、行くか・・・」
その時、孝平の目は死んでいた。

「あのー、シスター」
「どうなされました?」
鯖の目になっている孝平がたどり着いたのは教員席。
「いえ、大変申し上げにくいことですが、ルールはルールですので」
やたらに卑屈になっているが、いかんせん中身が中身。まず正当性を主張しておく。
「大凶?」
さっきの封筒を見ていかぶるシスター天池。大凶の相手がキリスト教徒というのも何というか皮肉なものだ。
「それで、その手紙にはどうすべきと書かれているんですか?」

『まるちゃんをお姫様だっこして走れ』

「あは、ははは・・・」
「ははははは・・・・」
二人のおそろしく冷たい笑い声が教員席に響く。
「ははっは、面白そうではないですか、支倉、頑張れ」
この状況を見てればいいだけの青砥先生は気楽なものだ。
「す、すみません!」
優勝を賭けた戦いから逃げることはできない。卑怯な人間ではないと自覚する孝平には自チームのために戦うという選択肢しか残されてしなかった。
「え、ええ?」
勝利のため、卑怯者と呼ばれないためには恥も外聞もない。
「行きますよ!」
気合を入れてシスターを抱える。二人の身長差が11cmしかないのでかなり難しい。
「あ、あの・・・」
「動かないで下さい!」
もうこうなったら命令口調もご容赦。まともに走ってゴールにたどり着くのが最優先事項なのだから。
「・・・」
そもそもお姫様だっこというのが両腕に結構無理をかける態勢だったりする。
しかも走ることによる揺れで彼女を支える両腕がズレるし、ビロードのような修道服がこれまた滑り易いので何重の苦労が孝平に重なっていく。
「くっ・・・」
走りながら持ち直す。そのたびに彼女の顔が孝平に近づき、彼女の体が孝平の皮膚感覚を刺激する。
時折両腕に大きくて柔らかいものを感じるが、それを相手に知られたらマジ殴りだ。
必死に別のことを考えようとする。でもついついシスター天池に目が逝ってしまう。
・・・綺麗な人だなぁ・・・
同じ綺麗でも瑛里華とは全く逆。色で言えば紅と藍。
・・・聖なる美しさってものなのかな?・・・
そうだ、千堂瑛里華は吸血鬼だからどうしても「魔」の印象を感じる。
監督室で見たスイッチが入った彼女は正に「魔」だった。
対して天池志津子という人はシスターということもあって正真正銘の「聖」。
・・・そんな聖なる人と、吸血鬼が何で共存しているんだ?・・・
わからない。今の自分にはこの学院や千堂という存在のほんの一滴しか見ていないのだから。
「あの?支倉君?」
「は、はい!」
「もうゴールしましたので、下ろしてくれません?」
・・・あれ?
孝平の頭脳が色々と考えている間、孝平の両腕は必死にシスター天池を支え、両足は必死にゴールへ向かって突き進んでいた。
「すごい、トップよ!」
陽菜、そして同じクラスの他の面子が駆け寄ってきた。
「え?」
「まったく、お前と来たら」
司もいる。彼の隣にはなぜかパンダの置物が鎮座しているが。
「ゴールした後もシスターを抱えっぱなし。よくフライパンで殴り殺されなかったな」
「あ、あはははは」
全身に冷や汗が噴出してきた、ついでに体が震えてきた。
「こほん」
「すみません!」
シスター天池に向き直り、ひたすらに平謝り。
「し、使命のためにやったことですし、今回は不問にしておきます」
そう孝平に告げるシスター天池の顔はちょっとだけ顔が赤い、少なくとも孝平の心はそう感じ、腕は彼女の柔らかい感覚をしっかりと記憶していた。

「で、悠木姉」
「何かね、ワトスン君?」
「まさかこういう結果になるとは」
焦げ臭くなっている伊織がかなでに問う。
「いや、兄妹愛もいいではないか、そう思わないかね?」
やっぱり自分でするしかない。そう伊織は思った体育祭だった。

#あとがき
*体育祭イベントです。
本来は封筒を選ぶところに選択肢を入れ、なおかつ美術部部長も出して
→志津子さんを孝平が、部長を司が運ぶ
→部長を孝平が、志津子さんを司が運ぶ
という形にしたかったのですが、話の展開がいまいちうまくいかずボツ(^_^;;;
後、お姫様だっこというと「小柄なヒロイン」ですが、たまにはその逆を狙ってみるのもよいかと(笑)